2020年

上川 桂南恵 – 武田 萌花 Kanae Kamikawa – Moka Takeda

TARA JAMBIO ART PROJECTの参加に向けて結成されたアートユニット


熊本県出身。 現在、東京藝術大学大学院美術研究科 先端芸術表現専攻 修士課程在籍。 生まれ故郷で水害に遭遇してから、自然環境で起きていることを描画方法に取り入れている。災害が起きてから準備するのではなく、雨風と共生し日常的に自然災害に向けてソフトな勧告ができる絵の仕組みを模索している。主な活動は、「美しさの中の危険/防災絵画と新たな発光生物 タイ訳(อันตรายในความงดงาม/จิตรกรรมป้องกันภัยพิบัติและสิ่งมีชีวิตเรืองแสงรูปแบบใหม่) 」2022(タイ、チーム展)、「体験型シンポジウム 災害時のアートインフラを考える」2021(熊本市現代美術館)、「タウン情報誌『かじゅめる』にて連載開始」2019-など。ウンピョウjapankanae(Youtube)にて音楽など。

上川 桂南恵 Kanae Kamikawa

1997年東京都出身。 現在、東京藝術大学大学院美術研究科 先端芸術表現専攻 修士課程在籍。 現代における「風景の在り方」や「移動」をテーマに、映像や物語を用いた体験型のインスタレーション作品を制作している。2022年ドイツ・ミュンヘン美術アカデミーに留学。主な活動は、『群馬青年ビエンナーレ2021』入選(2021)、『TOKYO GEIDAI ART FES 2021』優秀賞(2021)、文化庁メディア芸術祭関連企画『ART MEETS TOKYO』(2020)、京都府主催アーティスト・イン・レジデンス事業『京都Re;Search in 亀岡』(2019-2021)など。

武田 萌花 Moka Takeda

2020年10月、熊本県天草のマイクロプラスチック調査に同行した 2人は、本来個人で活動をしていますが、今回のプロジェクト参加に向けてアートユニットを結成しました。

上川さんは、 故郷の水害に遭遇した後から、自然環境で起きていることを絵に取り入れています。災害の備えにつながるソフトな警告、自然の美しさと声なき声の存在を日常から伝えており、災害が起きる根底が何か分かるのではないか、また地上で生きていたらみることができないものたちに会うべく地元近くの海で行われる調査の同行アーティストに応募しました。

一方、武田さんは「風景」や「旅」をキーワードに映像を用いたインスタレーション作品を制作しています。他者との作品制作に興味があり今回アートユニットとしての応募を提案したそうです。

調査に参加して制作された2人の作品

「to see/sea」&「メジナの絵」

「to see/sea」&「メジナの絵」

振動する板の上に立ち、船での作業の声を聴きながら上川さんの「メジナの絵」の絵画を鑑賞することで、船の上にいることを想起させる絵画インスタレーション作品です。

同行した調査での体験や科学者の話を聞き、海洋や環境問題について知識は得たけれど、船の上で穏やかで美しい海しか見ておらず、なかなかリアリティを感じられずもやもやした気持ちが残っていた2人。

そんな中、調査直後に乗ったグラスボードでメジナの群れに出会い、2人ともがメジナに見られていると感じたそう。

その時の、何かが喉につっかえるような感覚は、メジナに見つめられた瞬間繋がったといいます。

「メジナの絵」

上川さんは自身の絵画についてこのようにコメントしています。

「魚が一生懸命真顔でご飯を食べているところが衝撃的でした。なんでこんなにも真顔なんだろうと思うと同時に、人間に対し”しっかりするように”と警告を訴えるメッセージのようでした。快適に生活をしていると自然環境の変化は分かりづらいところがあります。大災害が起きてから慌てて行動することにならないように、自然の循環の見えにくいところを私は作品で表し陸上で示したいと考えています。これは故郷での水害時に川の底の泥が頭の上まできたところを目撃したことも影響しています。その時は、地元のうなぎ屋のうなぎがどうなったのかが、気になって仕方がありませんでした。今回はメジナを絵として陸上に持ってきて会わせることで将来起こりうる海面上昇の問題も想像できればと思います。」

「メジナの絵」

インスタレーションのタイトル『to see/sea』には「見る」「海へ」という二重の意味がありますが、「海へ行き、見る」という一方向的な視点だけでなく、「海の方から見つめられる」という視点、またそこから「絵画を見ること」への根源的な問いを投げかけています。

調査後の心境や作品の変化

上川さんは「調査に同行した日以来、私はメジナの表情が忘れられません。」といいます。もっと近くでいろんな魚と会いたいと思い、赤道近い東南アジアの海に潜りに行き魚目線で魚と交流もしたとか。

「その時は溺れそうになり、いかに生の魚の声を読み取りに行くことが大変かを体感しました。また、今まで海の色は、青を使えば良いと思っていましたが小さな生き物の集まりであの色はできていることを知り、いのちの生きた色ということで色を進めました。地球は繋がっていてメジナたちの一生懸命さに恥じないよう自然と共生したいと思います。」との事。

現在は自然環境で起きていることを絵に取り入れ、災害の備えにつながる ソフトな警告、自然の美しさと声なき声の存在を伝え続けています。

武田さんは「科学者とアーティストという違う分野でのコラボレーションの可能性を感じた」といい、調査同行以降、他分野の方と積極的にコミュニケーションを取ったりコラボレーションに挑戦しています。特に2022年からはドイツ留学中に出会った化学や建築・生物学を専攻する友人と「EKKYO.HUB」という団体を設立し、共創をテーマにしたイベントなどの活動を始めています。

そして、2人ともいつかタラ号に乗りたい!という熱い想いを持っています。

「いつかタラ号に乗って世界中の環境の違いや、人々の環境への意識の差を感じながら沢山の生き物たちや大自然に対して作品を通じて光を当てていきたいです。」

上川桂南恵

武田萌花

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