イベントレポート:落合陽一さん × 日比野克彦さん トークイベント&タラ号船内ツアー

登壇いただいたのは、メディアアーティストの落合陽一氏と、アーティストでタラ オセアン ジャパンの理事でもある日比野克彦氏。 お二人はともにタラ号に乗船された経験を持ち、その体験をもとに、船上での暮らしやタラ号の魅力について語っていただきました。 落合さんは2年前、スペインでタラ号に乗船されイルカと“交信”しながら水中音を録音するなどの取り組みを行っていました。その経験を起点に、現在は鳥の声をデータ化・分析する研究にも取り組まれています。今回の東京〜高松の航海でも、イルカなどの音を収録する予定です。 日比野さんからは、タラ号プロジェクトが始まる以前、アニエスベーの息子であるエチエンヌ・ブルゴワより「海洋研究を行う船で環境問題に取り組みたい」という構想を聞いていた、というエピソードをご紹介いただきました。 トーク終了後には、支援者の皆さまとともにタラ号の船内ツアーを実施。限られた空間の中で、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が共同生活を送る様子を、間近に感じていただきました。 参加いただいたみなさまからは、 「少人数で温かみのあるイベントでした。」「落合さんや日比野さんとこんなに近い距離でお話しできるとは思いませんでした!」「タラ号やタラ オセアンの活動のスケールの大きさを実感しました。」「とても楽しく、貴重な経験になりました。」 などうれしいお言葉を頂戴しました。 ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

粟島発、海洋プラスチックごみゼロへ「Awashima Heart Project 2026 」を実施

「Awashima Heart Project」は、タラ オセアン ジャパンが三豊市と連携し推進する海洋環境教育に賛同する企業とともに2023年に発足した取り組みです。参加企業の従業員が粟島に漂着・堆積した海洋プラスチックごみの回収を行い、自然環境の現状を体感するとともに、その経験を発信することで、環境問題への関心を広げることを目的としています。 第3回となる今回はこれまでの取り組みに加え、粟島を起点に地域と企業が連携し海洋プラスチックごみ問題に対して「体感」にとどまらない具体的な解決行動へとつなげることに重点を置きました。 三豊市や漁業関係者、市民なども参加し産官民が連携した継続的な取り組みへと広がっています。さらに、海洋プラスチックごみゼロの実現に向けた「共同宣言書」の署名・発行や 各企業の取り組みを共有する場も設けました。 当日は、クリーンアップ活動に加え、ビーチでのマイクロプラスチック採取体験を実施しました。また、参加組織による発表では、各社の環境への取り組みが共有され、産官民が相互に学び合う貴重な機会となりました。 タラ オセアン ジャパンからは、2025年8月に発表された科学論文の知見を引用し、2020年から2023年にかけて実施した日本沿岸域におけるマイクロプラスチック調査の成果を共有しました。海岸に漂着したプラスチックゴミの回収(クリーンアップ)に留まらず、調査結果が示す「プラスチック流出の実態」に基づき、日常生活や事業活動における生産・消費の在り方そのものを見直す重要性を提言しました。 「粟島”発”海洋プラごみゼロ共同宣言書」の署名式では、三豊市の山下市長をはじめ、企業・自治体・団体12者および個人2名が署名しました。参加者は、それぞれの日常生活や事業活動を通じて、海洋プラスチックごみゼロの実現に向けて行動することを宣言しました。 Awashima Heart Projectは、「粟島発の海洋ごみゼロ」を目指し、今後も継続的に取り組んでまいります。海洋ごみ問題は地域にとどまらず、日本、そして地球規模の課題です。 タラ オセアン ジャパンは、「Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査」の成果をもとに、粟島での実践を起点とした科学的エビデンスに基づく行動を社会へと広げ、プラスチック汚染問題の解決に貢献してまいります。 なお、本共同宣言に込められた産官民の想いは、2026年4月26日に粟島を訪れる科学探査船タラ号のクルーや科学者たちへ直接届けられる予定です。当日は、島民との交流の場において、本共同宣言書を授与するセレモニーを行い、世界へ向けた「粟島”発”の決意」を共有します。 「Awashima Heart Project 2026」参加企業・自治体・団体一覧

北極  氷に覆われた、知られざる生物多様性の大地

なぜ北極の生物多様性は特別なの? 多様な生息環境 北極と聞くと、まず思い浮かぶのは、海氷や氷山、氷河など、さまざまな形の「氷」かもしれません。けれども実際には、この地域には多様な生息環境が広がっており、過酷な条件に適応した豊かな生命の世界が息づいています。 陸上では、動植物の姿がひかえめなツンドラが広がり、そこには貴重な淡水の貯水域や、石に覆われた荒涼とした大地も共存しています。 海では、多くの種が海氷の上や内部、さらには水柱や海底にまで生息し、それぞれの環境をすみかとしています。 氷と寒さが形づくる過酷な環境 北極は、冬には気温が氷点下40℃を大きく下回り、空気の乾燥度も砂漠に匹敵するほど厳しい地域です。夏になると太陽が戻り、白夜のもとで一日中光が差しますが、それでも気温は10℃を超えることはほとんどありません。 海面が凍って形成される海氷は、決して平らな氷原ではありません。実際には、押し合いへし合いしてできた氷の塊や、重なり合う氷板(圧縮による氷の隆起)が連なる、起伏に富んだ混沌とした地形です。海流や風の影響を受けて、割れたり再び閉じたりもします。 この海氷は、多くの海洋生物や陸上生物にとって重要な生息環境です。休息し、餌をとり、捕食者から身を守るための欠かせない場となっています。 白夜と極夜 ― 規格外の生体リズム 北極圏(北極圏以北)では、地球上の多くの地域とは異なり、ある時期になると昼と夜の長さが極端になります。夏至や冬至の頃には、太陽が24時間地平線の上にとどまり続ける「白夜」や、逆にまったく昇らない「極夜」が生じます。とはいえ、こうした時期を除けば、高緯度地域であっても昼と夜は交互に訪れ、その長さは季節とともに徐々に変化していきます。 この現象は、地球の自転軸が傾いていることに由来します。北半球の夏には、地軸が太陽のほうへ傾くため、太陽光が長時間にわたり北極圏を照らします。反対に冬には、地軸が太陽から遠ざかる方向に傾き、一部の地域は長期間にわたって暗闇に包まれます。 このような極端な光環境の変化は、生物にとって一般的な昼夜サイクルを保つことを非常に難しくします。そのため北極の生きものたちは、精巧で、しかもあまり知られていない独自の適応戦略を発達させてきました。 気候のバランスを支える、欠かせない生物多様性 一見すると厳しく無機質に見える北極ですが、実は地球規模の気候調節において中心的な役割を果たしています。海の生物多様性は海洋の食物連鎖を支えるだけでなく、特にプランクトンを通じて炭素の吸収にも貢献しています。 植物プランクトンは光合成によって海水中に溶け込んだ二酸化炭素を取り込み、海洋内に炭素を貯蔵します。これにより、地球規模での気候調整に寄与しているのです。しかし、海氷の減少はこうした動態を変化させ、一次生産や、それに連なる食物網全体に影響を及ぼしています。 陸上や沿岸域では、北極の哺乳類や鳥類が、生物の拡散に重要な役割を担っています。移動や採食、排泄を通じて、種子や栄養分、微生物を長距離にわたって運びます。こうした目に見えないやり取りが、土壌の肥沃度を高め、新たな生息地の形成を助け、陸上生態系の維持を支えています。 レミングからホッキョククジラまで、動物も植物も、それぞれがこの繊細な均衡の中で、不可欠かつ補完的な役割を果たしているのです。 極限環境に対する、生きものたちの適応戦略とは? どうやって寒さを生き抜くの? ・代謝の低下と不凍タンパク質 極北に生きる動物たちは、寒さから身を守り、餌を探して移動するために多くのエネルギーを消費します。そのため休息が不可欠ですが、常に明るい日や暗い夜があるとは限らない環境では、睡眠と摂食のサイクルも影響を受けます。彼らは時間に従ってではなく、必要に応じて眠り、狩りをします。このことが移動パターンや社会的行動にも影響を与えています。 また、北極ダラのような種は「不凍タンパク質」を持っています。これらのタンパク質は、形成され始めた小さな氷の結晶に結合し、その成長を止めます。もし結晶が成長すれば、細胞が損傷を受け、生存が脅かされてしまいます。不凍タンパク質は、まさに命を守る分子レベルの防御策なのです。 ・エネルギー豊富な食事 脂質は非常にエネルギーに富み、寒さに対抗するうえで欠かせない存在です。最小の生物である細菌から、海洋哺乳類のような大型動物に至るまで、脂質は体温維持とエネルギー確保の鍵となります。そのため、生態系の食物網の中では、食事を通じていかに多くの脂質を取り込めるかが、生存を左右する重要な要素となっています。 ・断熱(保温) セイウチ をはじめ、多くの海洋動物は「脂肪層」と呼ばれる厚い皮下脂肪を持っています。これにより、氷のように冷たい海水から体を効果的に隔離することができます。この脂肪層は、エネルギーの貯蔵庫であると同時に、体温を一定に保つための重要な仕組みです。成体だけでなく、幼い個体にとっても、生き延びるために欠かせない役割を果たしています。 一方、ホッキョクグマの場合は事情が異なります。生まれたばかりの子グマは非常に小さく、発達も未熟で、体重はわずか数百グラムほどしかありません。まだ十分な脂肪層も備えていません。 彼らが最初の数か月を生き延びられるのは、巣穴という安全な環境、母親の体温、そして脂質に富んだ母乳のおかげです。成長するにつれて、子グマは急速に体重と脂肪を蓄えていきます。これは、その後に待ち受ける北極の過酷な環境に立ち向かうために不可欠なプロセスなのです。 ・体毛・被毛・毛皮 ホッキョクウサギのように、非常に暖かい毛皮は優れた断熱材となります。実際、この種は寒さへの耐性が最も高い哺乳類のひとつです。その被毛の密度は、同じ仲間の他の種よりも高く、長く半透明の上毛の下には、非常に保温性の高い下毛が隠れています。こうした幾重もの保護層によって、自らの体温を長時間保つことができるのです。 どうやって夏の「24時間の光」を生き抜くの? 短い北極の夏のあいだ、太陽は24時間輝き続けます。この絶え間ない光は、動植物にとって利点であると同時に大きな試練でもあります。まぶしさや方向感覚の乱れ、さらには紫外線による組織へのダメージを引き起こすこともあります。 一方で、この環境に適応した種にとっては大きな恩恵もあります。代謝が活発になり、採食条件が向上し、捕食者に対する脆弱性が低下するのです。 たとえば、珪藻と呼ばれる植物プランクトンは、光エネルギーを利用して有機物を生み出します(光合成)。過剰な光を受けた場合には、光合成に関わるタンパク質がその余分なエネルギーを熱として放散し、不可欠な生物学的プロセスを守る仕組みを備えています。 また、極北の動物たちは、この短い夏のあいだに繁殖サイクルを完了させなければなりません。限られた時間の中で次世代を残すことが、生存の鍵となっているのです。 ・妊娠のコントロール ヒゲアザラシは、出産に最も適した条件が整うまで、子どもの誕生時期を調整することができます。とくに、餌資源の利用可能性などの環境条件を見極めながら、出産のタイミングを合わせるのです。こうした柔軟な繁殖戦略は、変動の大きい北極環境で子を生き延びさせるための重要な適応のひとつです。 極夜をどう生き抜くの? ・移動(回遊) この地域に生きる多くの動物は、餌資源や繁殖地を求めて、数百キロから時には数千キロも移動します。たとえば、ザトウクジラは、一年中北極にいるわけではありません。プランクトンが大量発生する夏のあいだだけ北極圏に滞在し、豊富な餌をとります。いわゆる「ブルーム」の時期です。夏の終わりには南へ移動し、冬は暖かい熱帯の海域で過ごします。そしてそこで子どもを出産するのです。 ・カモフラージュ 一部の動物は、雪景色の中でほとんど見分けがつかない白い被毛を持っています。たとえば、ホッキョクウサギ、オコジョ、ホッキョクギツネなどです。この保護色は、ある種にとっては捕食者から身を守る手段となり、また別の種にとっては獲物に気づかれずに近づくための武器となります。白い大地に溶け込むことは、極地で生き延びるための重要な戦略なのです。 生き延びるために発達した聴覚と嗅覚 発達した聴覚や嗅覚も、極地での生存を支える重要な適応です。視界が限られる吹雪や暗闇の中でも、音やにおいを頼りに、獲物や仲間、あるいは捕食者の存在を察知することができます。 こうしたさまざまな適応によって、この世界でもっとも過酷な環境のひとつにおいても、北極特有の生物多様性は維持されているのです。 北極を代表する哺乳類にはどんな動物がいるの? ホッキョクグマ: 海氷を渡り歩くノマド ホッキョクグマは卓越したスイマーです。約11cmもの厚い脂肪層と密な毛皮に守られ、氷のように冷たい海の中でも何時間も過ごすことができます。主な獲物はアザラシで、優れた嗅覚を使って、1メートルもの氷の下にいる獲物の気配さえ察知します。また、単独で行動する放浪者でもあり、狩りも生活も基本的に一頭で行います。オスは最大で650kgに達し、時速40kmで走ることもできます。メスは2~3年かけて子どもを育て、その間に狩りの方法や、この過酷な環境で生き抜く術を教えます。子グマはおよそ1歳から狩りができるようになります。 ※生き延びるためには、年間およそ45頭のアザラシを食べる必要があるといわれています。 セイウチ:ひげをたくわえた巨人

Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクトを加速させるクラウドファンディングを開始

クラウドファンディングサービス「READYFOR」にて、1,000万円を第一目標に、2026年3月4日(水)から2026年4月30日(木)まで支援を募ります。 海は、人間活動によって生じた余分な熱の多くを吸収し、気候を調整する重要な役割を担っています。また、海洋生態系は光合成を通じて酸素を生み出し、私たちの暮らしを支えています。 しかし、乱獲や海洋汚染、海洋酸性化、気候変動など人間の活動に起因する環境問題の影響により、海の環境は急速に変化しています。 こうした現状を科学的に調査し、社会に警鐘を鳴らす科学探査船「タラ号」が、8年ぶりに日本へ特別寄港します。この来日を機に、日本で進める「Tara JAMBIOブルーカーボンプロジェクト」を継続・発展させるとともに、海に関する啓発活動をさらに進めるため、クラウドファンディングに挑戦します。 8年ぶりに日本へ寄港する科学探査船「タラ号」の滞在期間中にクラウドファンディングを実施することで、どこか遠い存在だった海や海洋調査を、支援者の皆さまが「自分事」として捉えられる機会を創出します。 この貴重な寄港を記念し、リターンには停泊中のタラ号乗船ツアーや船上カクテルパーティーなど、タラ号ならではの特別なプログラムをご用意しました。タラ号の旅路に加わる“クルーの一員”として体験していただけます。 支援が、研究を後押しするだけでなく、海とつながる一歩となります。 皆様の温かいご支援を何卒よろしくお願いいたします。

イベント告知: マリンダイビングフェア 2026 東京・池袋

「マリンダイビングフェア」は、毎年多くの海好きが集まるアジア最大級のダイビング&リゾートのイベント。国内外からの出展に加え、水中写真や最新ギア、環境保護関連など多角的なテーマでイベント全体が構成され、初心者からベテランまでが楽しめる充実の内容となっています。 タラ オセアン ジャパンはこの度、この「マリンダイビングフェア」に出展。タラの活動をご紹介するパネル展示を実施します。さらに、タラのSNSフォローでTARAスペシャル缶バッジをプレゼントするキャンペーンも行います。 ダイビングは、普段見ることのできない海の世界をのぞくことができる、とても魅力的なアクティビティ。「これから始めてみたい」という方に向けた講習相談コーナーもあるそうです。会場では水中写真展示などもあり、ダイバーでなくても海の世界を楽しめるイベントです。 海の魅力を感じに、ぜひ遊びに来てください! イベント概要 「マリンダイビングフェア 2026」 日時:2026年4月3日(金)10:00-18:00、2026年4月4日(土)10:00-17:00、2026年4月5日(日)10:00-17:00 会場:東京・池袋サンシャインシティ 文化会館2F(Dホール) 無料ですが事前登録が必要です 詳細はマリンダイビングフェア 公式ホームページをご確認ください。

タラ号が8年ぶりに日本に寄港: 4月に東京・高松・粟島・尾道へ

タラ号が新プロジェクト「タラ号サンゴプロジェクト」の調査開始を前に、日本に寄港します。  2017年、2018年以来、8年ぶりの来日となる今回の寄港は、設立10周年を迎えるタラ オセアン ジャパンの活動推進と、日本のみなさんに海をより深く知ってもらうことを目的としています。期間中は、地球温暖化や海洋汚染を考える乗船体験やイベントを実施し、海洋環境への理解を呼びかけます。 寄港スケジュールについて ※スケジュールは変更になる場合がございます 寄港地では、地球温暖化や海洋プラスチック汚染など、海や地球が直面する課題について理解を深め、これから私たちに何ができるのかを考える機会として、タラ号の乗船体験やセミナーを開催します。 東京:イベント情報 シンポジウム「 海洋マイクロプラスチック問題と国際条約の行方」 本シンポジウムでは、海洋科学、廃棄物管理、国際環境法の専門家を招き、海洋マイクロプラスチックに関する最新の研究成果とその科学的知見が国際政策や条約形成にどのように活かされ得るのかについて議論します。タラ オセアン ジャパンとJAMBIOマリンバイオ共同推進機構による全国15拠点のマイクロプラスチック調査の成果や、アジア地域における廃棄物管理の課題などを踏まえ、科学と政策を結ぶ対話の場を提供します。 日時:4月13日(月)15:00-17:00 懇親会(任意参加) 17:15-18:00 場所: 上智大学 四谷キャンパス 6号館17階 ファカルティ・ラウンジ  参加無料 (懇親会参加費は1,500円) 登壇者: ・中山直樹 環境省 水・大気環境局海洋環境課 海洋プラスチック汚染対策室 室長・ロマン・トゥルブレ タラ オセアン財団 エグゼクティブディレクター・シルバン・アゴスティーニ 一般社団法人タラオセアンジャパン 理事 /IRD(フランス国立持続可能な開発研究所)研究員・堀田 康彦 公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)持続可能な消費と生産 リサーチディレクター・織 朱實 上智大学大学院 地球環境学研究科 教授・長谷代子 環境省 水・大気環境局海洋環境課 海洋プラスチック汚染対策室 室長補佐 ・モデレーター あん・まくどなるど 上智大学アイランド・サステナビリティ研究所 所長 言語: 日本語  ※英語/仏語スピーカーの登壇者には、日本語通訳が入ります。 共催: タラ オセアン ジャパン、上智大学アイランド・サステナビリティ研究所、JAMBIOマリンバイオ共同推進機構 タラ号船上見学 8年ぶりに日本に来るタラ号へご案内。実際に船上に足を踏み入れ、私たちの活動を間近で体感できる貴重な機会です。 日時: 4月11日(土)14:00-17:004月18日(土)16:00-18:004月19日(日)16:30-18:30 場所:日の出船着場 東京都港区海岸2丁目7−103 無料・要事前申し込み 各回定員30名、所要時間は約30分です。 ※見学はタラ号の船上(デッキ)となります。船内はご覧いただけませんので、あらかじめご了承ください。※小学生以下のお子様が参加される場合は、必ず保護者の同伴をお願いいたします。 グループで参加をご希望の場合も、全員分の個人情報が必要となります。お手数ですが、1名ずつお申し込みください。 お申込みは4月8日で締め切りいたします。 3月4日(水)から開始したタラ

参加者募集: 3/9(月) Awashima Heart Project 2026

「Awashima Heart Project」とは、タラ オセアン ジャパンと海洋環境教育に賛同した企業が2023年に発足しました。三豊市の粟島に漂着した、または廃棄された海洋プラスチックごみのクリーンアップを参加者が行い、粟島の自然の美しさや環境保護の重要性を体感し、その体験を発信することで、多くの人に自然を守ることの重要性や、環境問題に目を向けるきっかけを提供することを目的としています。 このプロジェクトは、クリーンアップ活動に加えて、タラ オセアン ジャパンが日本で行った海洋プラスチック汚染の科学調査や、海洋が抱える課題の説明を行い、参加者の海洋保全の重要性についての理解を深めるプログラムも含まれています。 2026年の活動は企業や自治体からの参加に加えて一般参加者を募集します。 1日のみの活動期間となりますが、いっしょに粟島をきれいにしプラスチック問題について考えましょう! イベント概要 Awashima Heart Project 2026 日時:2026年3月9日 (月) 09:00-17:00 (午前のみの参加も可) 場所:香川県三豊市粟島 無料イベントですが、ルポール粟島でランチを取られる場合はご自身でご負担ください 定員:20名程度 プログラム: ビーチクリーン、マイクロプラスチック採取体験 特別セミナー 共同宣言書署名 ※お申込みは3/6まで 企業で参加ご希望の場合はお申込みフォーム内記載のメールにてお問合せください。

[ブルーカーボン]海洋ジオエンジニアリングは、気候変動への解決策となり得るのか?

気候の味方としての海 地球表面の70%以上を占める海は、気候の調節において重要な役割を担っています。海は毎年、人間活動によって排出される二酸化炭素(CO₂)の約4分の1を吸収し、地球温暖化の進行を抑えています。しかし、この炭素は地球規模の循環の一部であり、海による吸収は自然由来の排出とのバランスの中で成り立っています。そのため、海がより多くの炭素を取り込むようになると、海の化学的・生物学的なバランスが変化してしまうのです。 近年、気候目標の達成に向けて、海が本来もつ炭素吸収能力「ブルーカーボン」を強化しようとする取り組みが増えています。 さらに最近では、海洋ジオエンジニアリングと呼ばれる技術も議論の対象になってきました。 これはいったい何なのか。 本当に効果はあるのか。 そして、海にどのような影響を及ぼすのか。見てみましょう。 ブルーカーボンとは? 海藻藻場、海草藻場、マングローブ、塩性湿地、干潟は炭素循環の調整において重要な役割を果たしています。これらの生態系は光合成によって大気中の CO₂ を吸収し、その一部を生物の体内や海底の堆積物として、時には長期間にわたり固定します。また、豊かな生物多様性を育み、海岸を守り、汚染物質をろ過し、化学的なバランスを維持する機能も備えており、気候を調整するうえで欠かせない存在です。ブルーカーボンとは、こうした海洋・沿岸生態系によって吸収・固定される炭素のことを指します。 しかし、「ブルーカーボン生態系」は、地球上でも特に脅威にさらされている環境のひとつです。それらが破壊されると、長年蓄積されてきた炭素が放出され、気候を守る存在だったはずの生態系が、逆に排出源へと変わってしまいます。こうした生態系を保全することは、気候変動の影響を和らげ、生命がもつ本来の循環とバランスを支えるために不可欠なのです。 「炭素の吸収源(カーボンシンク)」と呼べるのか? ブルーカーボンに関わるこれらの生態系は、しばしば「炭素の吸収源(カーボンシンク)」と表現され、大量の炭素を取り込み、正味の排出がないかのように語られることがあります。 しかし実際には、炭素は自然の循環の中を常に移動しています。 空気、水、土壌、そして生物のあいだを行き来するこの循環は、産業革命以前にはおおむねそのバランスが保たれていました。光合成によって吸収される炭素は、呼吸や分解、火山活動などによって放出される炭素と釣り合っていたのです。 海でも陸でも、炭素は最終的にはほぼ必ず大気へと戻ります。 そのため、これらを「吸収源」と呼ぶよりも、私たちの過剰な排出を一時的に緩和する”生命循環の調整役”と捉えるほうが、より実態に即しています。それらは、私たちが生み出したアンバランスを恒久的に埋め合わせたり、修復したりすることはできません。それでもなお、これらの生態系は地球規模の気候バランスにとって不可欠な存在です。気候の安定に寄与し、生物多様性を支え、人為的な攪乱に対する環境のレジリエンス(回復力)を高めています。 プランクトン、海における主要な炭素ストック 長らくブルーカーボンの概念からは除外されてきましたが、プランクトン(植物プランクトンと動物プランクトン)は、海洋の食物連鎖において不可欠な存在であり、地球規模の炭素循環を調節するうえでも重要な役割を担っています。 植物プランクトンは光合成によって、毎年、地球上のすべての森林に匹敵する量の炭素を吸収しています。しかし、その炭素の大部分は長期的に蓄積されるわけではありません。海洋の食物連鎖を支える栄養源として使われ、表層での呼吸や分解によって比較的早く再循環します。 その一方で、有機物のごく一部は「生物ポンプ」によって深海へと運ばれ、炭素が数百年にわたって隔離されることもあります。このプロセスは量的には限られているものの、気候の安定にとって欠かせません。 しばしば「海の見えない多数派」とも呼ばれるプランクトンは、空気・水・生物圏のあいだで炭素を循環させ、海が“呼吸”する仕組みを支える、動的な存在です。 しかし近年の気候議論では、光合成と深海への輸送によって大量の CO₂ を固定できる“都合のよい炭素吸収源”として、プランクトンに過度な期待が寄せられることも増えています。 海洋ジオエンジニアリング:海洋生態系を改変する試み こうした炭素の固定を強化するため、研究者や産業界では、海洋ジオエンジニアリング技術への関心が高まっています。海洋肥沃化から海洋のアルカリ化に至るまで、さまざまな手法が、海が持つ炭素隔離の潜在力を最大化し、人為的な温室効果ガス排出の影響を緩和することを目的として検討されています。 ブルーカーボンに関する海洋ジオエンジニアリングの主な手法 ・海洋肥沃化 鉄などの栄養塩を特定の海域に投入し、植物プランクトンの増殖を促す手法です。光合成を通じて、CO₂の吸収量を増やすことを目的としています。 ・海洋のアルカリ化 石灰岩やかんらん石(オリビン)などの鉱物を粉砕して海に加え、海水のpHを上昇させることで、CO₂をより多く吸収できるようにする技術です。 ・人工湧昇(アップウェリング) 機械的なポンプを用いて、栄養塩に富む深層水を海面近くまで引き上げ、植物プランクトンの生産を活性化させる方法です。 ・CO₂の直接注入 回収したCO₂を深海や海底下の地質構造に注入し、長期間にわたって貯留することを目指す構想です。 ・有害藻類ブルーム(HABs)の生物学的制御 特定の捕食者を導入することで、有害な藻類の異常増殖を抑え、生態系のバランスを回復しようとする手法です。 ・炭素の恒久的隔離 CO₂の溶解度を高めるため、マイクロバブル技術などを用いて表層海水を冷却し、より多くの炭素を水中に溶け込ませることを目指す方法です。 海洋ジオエンジニアリングが海の生きものに与える潜在的影響 近年の研究では、海洋生態系や生物多様性へのさまざまなリスクが指摘されています。 海洋ジオエンジニアリングにおける予防的アプローチ これらの技術は、理論上は大量の炭素を隔離できる可能性があり、開発者によれば、温室効果ガス排出削減の取り組みを補完する手段になり得るとされています。 しかし、すでに明らかになっている影響や、今後明らかになる未知のリスク、さらに、貯留された炭素がどれだけ確実に、どれほど長く留まるのかを測定・保証する信頼できる方法が存在しない現状を考えると、大規模な実施は生物多様性や海洋生態系の安定性にとって大きなリスクを伴います。 また、こうした技術に頼ることは、「魔法の解決策」があるかのような幻想を生み出し、最も重要である排出源そのものを減らす努力から目をそらしてしまう危険性もあります。 いまだ慎重な法的枠組み 海洋ジオエンジニアリングについては、すでに国際的な枠組みの中で一定の規制が設けられています。 これらの法的枠組みは、いかなる実験を行うにしても、慎重で、倫理的かつ透明性の高いアプローチが不可欠であることを示しています。タラ オセアン財団は、予防原則の適用を重視するとともに、人為的な気候変動に直面する海洋生態系の管理における倫理的な課題について考え続けています。私たちは、海洋ジオエンジニアリングに関して、責任ある公平な意思決定を促すための重要な提言を行っています。それは、海の健全性を守り、将来世代の幸福を損なわないためのものです。 陸域における炭素隔離 陸上での炭素隔離の最近の取り組みは、私たちに多くの重要な教訓を与えています。植林、土壌への炭素貯留、あるいは直接空気回収(DAC)などは、これまで「有効な解決策」として紹介されてきました。しかし実際には、コストが高く、効果が限定的で、炭素循環の複雑さを十分に考慮できていない事例も少なくありません。 海と同様に、陸上の生態系もすでに、炭素が生物圏と大気の間を自然に循環する、ほぼ均衡の取れたサイクルの一部です。人為的排出によって生じた炭素の過剰分を補うために「炭素を隔離しよう」とすることは、この循環を無理に操作することにつながり、結果が不確実で、ときに逆効果となる場合もあります。 実際、排出量の相殺を目的に造成された森林が、火災や伐採によって失われ、蓄えられていた炭素が再び大気中に放出された例もあります。また、導入や運用に必要なエネルギーを考慮すると、結果として炭素収支がマイナスになることが示されたプロジェクトもあります。

海洋保護区:海を守るためのダイナミックなアプローチへ

海洋保護区(MPA)とは? 海洋保護区(Marine Protected area: MPA)とは、生物多様性や生息環境、海の資源を守るために、人間活動が管理・制限されている海域のことです。 その形態はさまざまで、海洋サンクチュアリ、漁業保護区、海洋自然公園などがあります。目的は、海の生きものを守り、生態系を回復させ、漁業・観光・科学研究といった利用を持続可能なものにすることです。現在、世界の海洋の約8.4%が海洋保護区に指定されています。しかし、この数字の裏には懸念すべき現実があります。多くの海洋保護区が、十分な資金や監視体制を欠き、また常に変化する海の特性を考慮していないため、「紙の上だけの海洋保護区」にとどまり、十分な効果を発揮できていないのです。 なぜ海洋保護区は重要なのでしょうか? 海は、炭素を吸収・蓄積し、熱のバランスを保つことで、地球全体の気候を調整しています。また私たちは、食料、文化、経済など、暮らしに欠かせない多くの面で海に依存しています。 しかし現在、海洋の表面積の66%が、複合的かつ増大する圧力にさらされています。乱獲、さまざまな汚染、海水温の上昇、海洋酸性化、さらには外来種の拡大などがその要因です。 その結果、海の生物多様性は大きく失われつつあります。リビング・プラネット・インデックスによると、監視対象となっている種の個体数は、1970年から2020年の間に73%減少しました。また、地球上に存在すると考えられるすべての生物種のうち、これまでに発見・記載されたのは11〜78%にとどまると推定されていますが、そのうち56%の種が著しい減少を経験しています。このため、海洋生物は、淡水生物(85%減)、陸上生物(69%減)に次いで、3番目に大きな影響を受けている生物群となっています。 「2030年までに海洋生態系の30%を回復・保全する」という目標を達成するための有効な手段となり得ます。 しかし現状では、その運用はあまりに硬直的で、直面する課題に十分対応できていません。 効果的な海洋保護区のための6つの提言 2025年9月26日に科学誌 Nature npj Ocean Sustainability に掲載された論文(Esteban-Cantillo ほか/タラ オセアン財団 国際関係ディレクターのアンドレ・アブレウ氏も寄稿)では、現在の海洋保護区が抱える大きな課題が指摘されています。それは、多くの海洋保護区が空間的にも時間的にも固定されたままであるという点です。 しかし、海は生きており、常に変化し、動いています。海流、生物の移動、気候変動の影響など、海洋環境はダイナミックに変わり続けています。そこで科学者たちは、海のリズムに寄り添い、生物学的・物理的・社会的なダイナミクスを考慮することで、海洋保護区を本当に効果的なものにするための提言を示しています。 効果的な海洋保護区に向けた6つの提言: 1 空間的・時間的な保護を組み合わせる →種の移動や繁殖周期、栄養塩(鉄・マンガン・硝酸塩)、気候変動(水温、酸素、酸性化)の変化に応じて進化する、ダイナミックな海洋保護区を構築する。 2 海洋のダイナミクスを組み込む → 海洋生態系は相互につながり、陸上生態系よりも速く変化することを認識する必要がある。そのため、複雑な生態系を考慮できる、堅牢かつ革新的な科学に基づき、保全ルールを柔軟に適応させる。 3 生態系の法的認知 → ニュージーランドのワンガヌイ川の事例のように、特定の海洋生息域に権利や法的人格を認め、経済的利益からの圧力に対して保護を強化する。 4 種だけでなく「生命を支える機能」を守る → 種の多様性だけに注目するのではなく、炭素隔離などの重要な機能と結びつく機能的多様性も考慮する必要がある。 そのために、遺伝学・ゲノミクス、新たな顕微鏡技術、バイオインフォマティクス、人工知能(AI)などを活用し、生態系における遺伝的多様性や生態学的役割を含めた保全を行う。 5 「生きものとの関係性」を尊重する → 経済的な論理だけにとらわれず、保護区の設定や管理の初期段階から、地域コミュニティや先住民族を巻き込み、社会的・文化的価値を反映させる。 6 科学とガバナンスの革新 → 新たなBBNJ条約のもと、公海を含む海域を対象に、外洋生態系に適した知識基盤を備えた革新的なツールを開発する。 → プラスチック汚染、化学汚染、気候変動による影響を減らすことを、海洋保護区の実効性を高めるための不可欠な条件として位置づける。 これまでの保全戦略では見過ごされがちだったプランクトンの根本的な役割も忘れてはなりません。プランクトンは食物連鎖と炭素循環の基盤であり、効果的な海洋保護区を実現するうえで欠かせない要素です。 真に効果的な海洋保護区(AMP)に向けたタラ オセアン財団の提言活動 タラ オセアン財団は、以下の提言を国際的な議論の場で発信しています。

タラ極地ステーション:北極海での4週間における初のドリフト試験

北極圏への旅立ち 母港ロリアンを6月1日に出港し、初めての極北航海へと旅立ったタラ極地ステーションは、7月4日までスヴァールバル諸島のロングイェールビーンに寄港しました。 新たなクルーとアーティストのニコラ・フロックを乗せるための、短い停泊です。その後、船はさらに北へと進路を取りました。 海氷の真ん中に閉じ込められて タラ極地ステーションはポーラーシュテルンと合流 数日後の7月6日、タラ極地ステーションは、海氷帯への進路を切り開くために設定された合流地点で、砕氷船ポーラーシュテルンと合流しました。アルフレッド・ヴェゲナー研究所(AWI)が運航するドイツの砕氷船ポーラーシュテルンは、同海域での夏季ミッションの開始にあたり、1日かけてステーションが海氷の中へ進入するための航路を確保。その後、タラ極地ステーションは漂流を開始しました。 氷の中で初めて“単独”となったこの瞬間は、チームにとって魔法のようであり、同時に強い感動を伴う体験でした。クルーたちは、この特異な環境の中で船がどのように反応するのかを少しずつ学びながら、中央北極海の壮大な景観に出会っていきます。 技術的挑戦:氷に捕らわれる瞬間 砕氷船が切り開いた航跡は進むのが難しく、前方には大量の水と氷が押し流されていました。タラ極地ステーションはできる限りその後を密着して進む必要があり、マルタン船長は進路に神経を集中させていました。この同行は、本格的なドリフト試験への移行を意味する重要な段階でした。主任機関士のリュックにとって、この「氷に取り込まれる」体験はまったく初めてのことでした。これまで氷を避ける立場だった彼は、今回はあえて氷に閉じ込められる船の現実と向き合います。数トンもの氷塊が船体に打ち付けられ、その衝撃と音がステーション全体に響き渡ります。それは、機器や船体構造にとっての、実環境での本格的な試験でもありました。 ドリフト試験の開始 ロングイェールビーンを出港して以降、クルーたちはスヴァールバル諸島のフィヨルドや氷河が織りなす壮大な景観をすでに目にしてきました。しかし、ポーラーシュテルン号の後に続いたその先で、冒険はまったく新たな次元へと踏み出します。北極のドリフト航海、冒険の始まりです。高揚感、不安、そして畏敬の念が入り混じるなか、クルー、一人ひとりが実感していました。探検はいま、最も本質的な段階へと入ったのだと。氷に身を委ね、漂流するという段階へ。 ステーションで過ごす日々 タラ極地ステーションの船上でリアルタイムに語られる、クルーたちの日常をご紹介します。 発信地: 北緯 80°24.5’ 東経 010°13’ 海上にて——あるいは、ほとんど海上と言えない場所で… 「タラ極地ステーションとともに“航海する”という表現は、実のところ少し矛盾しているのかもしれません。 このステーションの本来の使命は、20年にわたって“漂流する”ことなのですから……。 それでも私たちは、ここ24時間ずっと西へと進んでいます。流氷にできるだけ近づきながら航行し、弱い風(凪)を利用して体勢を立て直しています。皆が『追い出されるのはあまりに早すぎた』と感じていた、この流氷帯の中心部へと再び戻るためです。 この新たに取り戻したダイナミズムは、船内の小さなコミュニティ全体を喜ばせていますが、とりわけ私のような船乗りたちにとっては、なおさらです。信じられないほど壮大なこの船と向き合い、発見の高揚感に胸を躍らせながら当直を共にする一方で、霧の帯や氷の壁が突然目の前に立ちはだかるかもしれないという緊張感が、常にすぐそばにあります。」 — ダニエル・クロン副船長 7月29日 「落ち着かない夜でした。昨日、船を海氷に係留したにもかかわらず、船の動きがはっきりと感じられました。午前2時ごろに目が覚め、その後4時にも再び目を覚ましました。もう我慢できず、何が起きているのか確かめるために外へ出たのです。明らかに、何かが起きていました。 到着したときには、一見するとかなり安定しているように見えた海氷は、いくつもの場所で砕けていました。新たな亀裂や水路が生まれ、より小さな氷盤が分断され、いまも漂流しています。私たちが係留していた海氷は、ほんの一部を残すのみとなっていました。」 — ティモ・パロ海氷専門家 8月2日 「目を覚ますと、前夜よりも“若い”氷の風景が広がっていました。より平らで、より均一です。こうして漂流し、絶えず景色が変わっていく中で、まるで形を次々に変える庭を持っているかのような感覚になります。 眠りにつくときには、平原や、空色の水たまりが点在する湿地のような景色だった場所が、翌日には、数メートルの高さに積み上がった氷塊が折り重なる混沌へと変わっていることもあります。 ラウンジの前には丘が生まれ、船尾の前には石柱のような、あるいは巨大なキノコのような氷が現れる。そしてその半日後には、すべてが再び均され、平らになっているのです……。」 — リュック・エリオ主任機関士 漂流型極地ステーションで暮らし、働く 10トンの食料を支える存在:船上料理人の重要な役割 タラ極地ステーションでは、船上料理人のソフィー・バンがいくつもの役割を担いながら日々を支えています。商船学校の資格を持つ彼女は、操船作業やタラ極地ステーションの各種試験にも参加しつつ、最も重要な任務である「クルーの食を支えること」を担っています。過酷な環境の中では、一食一食が心と体を整える大切な節目となります。食事は、彼らにとって欠かせない共同の拠りどころであり、分かち合いの時間なのです。 16か月に及ぶ食料自給を見据えて 入念な準備は不可欠です。船内には、冷凍食品、乾物、保存食を中心に、約10トンもの食料が積み込まれています。 極域環境ではエネルギー消費量が増えるため、ソフィーとキャロルは常に在庫のバランスを確認し続けなければなりません。 食料庫から冷蔵・冷凍室に至るまで、船内のあらゆるスペースが、食料や資材を安全に保管するために最適化されています。 クルーの暮らしにリズムを刻む食事 昼と夜の区別が失われる船上では、食事が時間の区切りとなり、異なるデッキで作業するクルーたちをひとつに結びつけます。 業務用設備を備えたキッチンで、ソフィーやキャロルが用意する食事は、北極の極地風景のただ中にあって、ひとときの温もりをもたらす大切な時間となっています。 かけがえのない生物多様性 生命の地としての北極 一般的なイメージとは異なり、北極は決して「何もない空白の地」ではありません。むしろ、豊かな生命に満ち、独自の生物多様性を育む地域です。また、その周辺には多くの先住民族が暮らしています。 今後の探査では、目に見えない生命や生態系の解明に取り組むだけでなく、北極海に生息する多様な生物――鳥類、キツネ、アザラシなどの海洋哺乳類、そしてとりわけホッキョクグマを対象とした観測プロトコルも展開される予定です。 6頭のホッキョクグマとの遭遇 ドリフト試験が行われた数週間のあいだに、タラ極地ステーションのクルーは6頭のホッキョクグマと遭遇しました。実際には、さらに多くの個体が近くまで接近していた可能性もあります。 このように高い遭遇頻度が見られたのは、海氷の縁(リム)が、彼らにとって生息と繁殖に欠かせない重要なエリアであるためです。 「遠くに、美しいホッキョクグマの姿を見つけました。 しばらくして再び姿を現した彼は、鼻先を風に向け、しなやかで素早い足取りで近づいてきます。

イベントレポート: Veolia Japan 社員向け環境啓発イベントを実施

今年のイベントの目玉は科学者と一緒に体験する干潟での生き物観察と採集でした。干潮の時間にあわせたため、集合時間がイベント開催史上初の早朝5:30! そして寒い中でしたが、みんなで見た朝日や泥まみれになって生き物を探す時間はかけがえのないものとなりました。 竹原ステーションに戻ったあとは、室内でセミナーやブルーカーボン生態系の実験と干潟で見つけたいきもの観察等をしました。 盛りだくさんの内容で、過酷な条件でのイベントとなりましたが、参加者からは 「実際に干潟に足を運び、生き物や藻類を観察することで、ブルーカーボンの仕組みを体感的に理解できた」 「自分たちで見つけたカニだから尚更かわいく見えた!」 「光合成実験は、短時間で海藻が二酸化炭素を吸収していることがよくわかった」 「生き物観察では、図鑑と現物を見比べて、種の同定を行うというのは生き物と遊ぶことの醍醐味だと思った」 など、たくさんの感想をいただきました。 またこのイベントを通じて「興味・関心を持つこと」を再認識いただいたように思います。 「環境に対する意識は変化したのではないかと思う。もっと興味を持っていろんなことに触れていきたい」 「海の酸性化について知らなかったため、詳しく調べます」 など、このイベントで終わりにしないで、なにか行動しようと思う参加者が多くとても嬉しく思います。 お忙しい中、また朝早い中、お時間を工面してお越しいただき本当にありがとうございました!

ロマン・トゥルブレ来日関連イベントレポート

11月25日(火)には、東京日仏学院にてトークイベントを実施。フランス語のみで通訳なしという形式にもかかわらず、多くの方にご参加いただきました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。 翌26日(水)には、日頃よりお世話になっている方々をお招きし、カンファレンス&レセプションを開催しました。参加者同士の交流が自然と広がり、あたたかなネットワークが生まれていたことが大変印象的でした。 また滞在中、同時期に開催されていた「芸術未来研究場展 2025」にも足を運ぶことができました。Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクトに参加したアーティストの作品を鑑賞し、日比野克彦さんとも交流する機会に恵まれました。 イベントにお越しくださった皆さま、改めて心より御礼申し上げます。

イベントレポート:香川県三豊市詫間小学校出前授業

みなさんには、タラ オセアン ジャパンが日本語吹き替え版制作に参画した映画「マイクロプラスチック・ストーリー」を視聴とタラ オセアンの活動について知ってもらい、ディスカッションをしてもらいました。 ディスカッションの内容は、出前授業を通じて学んだこと、地球や海の環境のために、自分たちでやりたいアクションについてです。 その中で「海のプラスチックは、陸から流れていることを初めて知った」 「洗たくするだけで、マイクロファイバーが出て海をよごしていることを知って驚いた」 「これからは、使い捨てのものをできるだけ使わない」 「スーパーに行ったら、エコバックを使ったりほうそうされていない物を選んで買う」 「プラスチック無しの給食をやるために、校長先生に提案する!」など様々な意見が飛び交いました。 プラスチック自体が悪いのではなく、使い捨てが多すぎること、分別やリサイクルするだけはなく、消費を減らすことも大切であることを、理解してくれたようで良かったです。 出前授業で学んだり考えたことを活かして、地域から行動に移してほしいと思います。 この授業の実現をサポートしてくださった三豊市と詫間小学校の関係者の皆さまに感謝申し上げます。

サンゴに関する10の事実:海の生物多様性を支える重要な存在

 1. サンゴ ― 動物?植物?それとも鉱物? サンゴってなに? 古くから、人々はサンゴを見て不思議に思ってきました。動物なのか、植物なのか、あるいは鉱物なのか? 実はサンゴは、そのすべての要素を少しずつ持っています。サンゴは石灰質の骨格に固定された動物の集まり(コロニー)で、その体内には共生する微細な藻類が住みついており、これが鮮やかな色を生み出します。 この動物たちは「ポリプ」と呼ばれ、体と触手を持つ小さなイソギンチャクのような存在です。ポリプは自分の下に石灰質の骨格を作り、それがサンゴ礁の骨組みとなります。 多数のポリプが集まってひとつのコロニーを形成し、まるでひとつの大きな生きもののように見えるのです。こうして形成されたサンゴ礁は、広大な範囲に広がり、宇宙からも確認できるほどです。 つまりサンゴは、動物であり、藻類(植物的要素)と共生し、鉱物の構造の上に築かれている存在。 この「三つの顔」を持つことこそ、サンゴが海の生態系の中で特別な存在である理由です。 2. サンゴと藻類の共生 ― 唯一無二の関係 褐虫藻(共生藻)の重要な役割 サンゴのポリプ(個々の動物)は、自力だけでは十分な栄養を得ることができません。触手で捕らえられるわずかな餌だけでは生き延びることができないのです。そのため、長い進化の過程でポリプは「褐虫藻」と呼ばれる微細な藻類と共生関係を築きました。褐虫藻はポリプの体内に住みつき、互いに助け合う関係を保っています。 この共生関係はサンゴにとって命綱です。褐虫藻がいなければ、サンゴは十分に栄養を得られず、美しい色も失ってしまいます。 なぜサンゴは主に熱帯の海に生息しているの? このサンゴと藻類の共生関係こそが、サンゴが主に透明で光の届きやすい熱帯の海域に生息する理由です。褐虫藻が光合成を行うためには十分な日光が必要であり、その環境が整っているのが熱帯の浅い海なのです。この関係は、異なる生きもの同士の協力のモデルとして、海の生命を支えるうえで欠かせない仕組みとなっています。 熱帯の海域は、栄養塩が非常に少ない「貧栄養(オリゴトロフ)」な環境です。そのため、サンゴと褐虫藻の共生関係は、このような条件の中で生き延びるための大きな進化上の利点となっています。 3. サンゴ礁 ― 海の生物多様性を支える柱 海のわずか0.2%に、驚くほど豊かないのちが集中 サンゴ礁は、海洋表面のわずか0.2%しか覆っていません。それにもかかわらず、そこには既知の海洋生物の30%以上が生息しています。色とりどりの魚、貝類、甲殻類、ウミガメ、そして多くのサメの仲間たち・・・サンゴ礁は、まさにいのちの宝庫です。 わずか1㎢のサンゴ礁には、フランス本土全体に匹敵するほどの大型生物の多様性が詰まっています。 サンゴ礁 ― 魚たちのゆりかご サンゴ礁の複雑なすき間や入り組んだ構造は、多くの生物にとって安全な隠れ家となっています。 とくに魚たちは成長の初期段階で捕食者から身を守るため、サンゴ礁に身を寄せます。こうした環境があるからこそ、サンゴ礁は「海のゆりかご」とも呼ばれ、多くの外洋魚の個体群がそこに依存しているのです。 サンゴ礁の豊かさを支える「島陰効果(Island Mass Effect)」 サンゴ礁という生態系の形成には、他にもさまざまな要因があります。 その中でも重要なのが、「島陰効果(Island Mass Effect)」と呼ばれる現象です。これは、島や環礁の周囲の海域にプランクトンのバイオマス(生物量)が豊富に存在するというものです。 その理由は、陸地からの雨水や河川の流出によって、周囲の海に栄養塩やミネラルが供給されること、 そして、島の存在が深層海流を変化させ、栄養分を上層に運ぶことにあります。 こうして供給された栄養分が植物プランクトンを育み、それが海洋の食物連鎖全体を支えています。 この現象こそが、世界各地にサンゴ礁が存在し、豊かな生命を育む理由のひとつなのです。 4. サンゴは海岸と人々を守る サンゴの役割は、生物多様性を支えることだけではありません。 何千年もかけて形成されたサンゴ礁は、自然の防波堤として沿岸地域を守っています。その複雑な構造は、波のエネルギーを吸収する盾のような働きをし、海岸浸食を防ぐ効果があります。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書によると、 一部のサンゴ礁は波のエネルギーの最大97%を吸収しているとされています。特に島嶼地域では、サンゴ礁がサイクロンなどの嵐から陸地を守る第一の防壁となっています。もしこの保護が失われれば、多くの沿岸地域の人々が甚大な被害にさらされるでしょう。サンゴは、生態学的な重要性だけでなく、人々の安全を守るうえでも欠かせない存在なのです。 5. サンゴは数億人の暮らしを支える生命資源 サンゴ礁の豊かさは、多くの人々の生活と密接に結びついています。世界では、5億人以上がサンゴ礁の存続に直接依存しているといわれています。観光、漁業、海岸保護、そして医療分野まで… サンゴは地球上でもっとも価値の高い生態系のひとつです。 フランスの「サンゴ礁保全イニシアチブ(IFRECOR)」によると、2016年時点でフランス領海内のサンゴ礁が人々にもたらす経済的価値は、年間13億ユーロ(約2%のGDPに相当)と試算されています。また、フランスの海外領土には、世界のサンゴ礁のおよそ10%が存在します。このような金額は評価方法によって変動し、自然を経済的価値で測るという課題もありますが、

『芸術未来研究場展 2025』TARA JAMBIO アーティストの作品展示

「Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクト」は、海藻や海草によって構成される“ブルーカーボン生態系”の科学的調査と、その重要性の発信を目的とした取り組みです。全国の調査拠点では、科学調査とあわせて、一般の方々にブルーカーボンの価値やタラ オセアンの活動を伝える啓発イベントも実施しています。 また、本プロジェクトにはアーティストも参加し、科学者たちと時間をともにしながら調査に同行しています。アーティストはそこで得た学びや気づきを作品として表現し、海の重要性を新たなアプローチで社会に届ける役割を担っています。 芸術未来研究場は、アートを人が生きる力の根幹に据え、人類と地球の未来を探求するための組織として、2023年に東京藝術大学のキャンパス外に創設されました。社会のさまざまな領域におけるアートの新たな価値や役割を広めるため、企業・官公庁・研究機関との連携を強化しており、そのビジョンはタラ オセアンの理念とも共鳴しています。『芸術未来研究場展 2025』は、こうした理念にもとづき進められてきた多様なプロジェクトの成果を紹介する場となっています。 2025年度のTara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクトのアート活動は、芸術未来研究場のプロジェクト「SIOME 東京藝術大学×香川大学 せとうち ART&SCIENCE」の一環として行われました。東京藝術大学と香川大学が協働し、アートとサイエンスの融合を通じて、海洋研究を社会とつなぐ新たな表現の可能性を探っています。 2025年度は7か所の調査地点のうち6か所にアーティストが同行し、科学者との交流や調査への参加を通して得た体験を作品として昇華しました。その成果を、ぜひ会場でご覧ください。 Tara JAMBIO 参加アーティスト イベント概要 芸術未来研究場展2025 日時:2025年11月21日(金) ~ 2025年11月30日(日)  午前10時 – 午後5時(入館は午後4時30分まで) 場所:東京藝術大学 大学美術館 (東京都台東区上野公園12−8) 観覧料:無料