© Pierre de Parscau / Fondation Tara Océan

概要

海のアマゾンの奥深くへ向かう探査

タラ号太平洋プロジェクトの出航から10年。サンゴの白化がますます深刻化するなか、科学調査船タラ号は母港ロリアンを出発し、次なる探査「タラ号サンゴプロジェクト」に向かいます。
18か月にわたり、タラ号は「海のアマゾン」とも呼ばれるコーラルトライアングルを航行し、なぜ、そしてどのように一部のサンゴが気候変動による海水温上昇に耐えているのかを解き明かし、将来の保全戦略につながる知見を明らかにしていきます。

科学船タラ号を見る
  • プロジェクトの調査期間 18ヵ月

  • 航行距離 30 000海里

  • 寄港地 26

  • 寄港する国の数 6

  • 調査地点数 10

  • 調査ダイビングの本数 1440

「これまで世界規模や海盆規模で行われてきた研究とは異なり、タラ号サンゴプロジェクトは、急速な海水温上昇が進むなかでも造礁サンゴの被度が比較的安定して保たれている、唯一の大規模サンゴ礁海域に注目しています。これは、サンゴのレジリエンス(回復力・耐性)の仕組みを解き明かすための、きわめて貴重な“自然の実験室”となります。」Paola Furla, Scientific Director, University of Côte d’Azur

西太平洋に位置するこの海域は、世界のサンゴ礁の約3分の1が集中し、既知のサンゴ種のおよそ4分の3(約600種)が生息する、真の生物多様性ホットスポットです。

タラ号は12月14日にフランスを出航し
2026年5月から2027年11月まで科学調査航海を行う予定です。
この期間中、コーラルトライアングルの中心に位置する沿岸国である
インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピンに加え
コーラルトライアングル域外のパラオとインドにおいて、海洋科学調査を実施します。

プロジェクトの航海マップ © Fondation Tara Océan
目的

回復力のあるサンゴの秘密を解き明かす

タラ号は、計画されている10か所の採水・調査地点それぞれに約35日間滞在します。科学チームは、生態系全体を捉える包括的(ホリスティック)なアプローチを採用し、4つのサンゴ属、ミドリイシ属(Acropora)、ヒドロサンゴ属(Millepora)、ハマサンゴ属(Porites)、ハナヤサイサンゴ属(Pocillopora)に焦点を当てて研究を行います。あわせて、サンゴ礁全体の生物多様性を把握するための補完的な解析も実施します。

どの種が存在し、どのように適応し、互いに、そして環境とどのように関わっているのかを理解するには、包括的なアプローチが不可欠です。そのため本調査では、多様な手法を組み合わせた統合的なフィールドプロトコルのもと、科学研究を4つの柱で構成しています。

 


環境コンテクストの把握

サンゴ礁全体の生物多様性を明らかにするため、採水ロボットを用いた環境DNA(eDNA)サンプリングを実施します。あわせてフォトグラメトリーにより、サンゴ礁の三次元構造を詳細に記述します。


サンゴ・ホロビオントの複雑性の解明

サンゴを取り巻く生物群集全体(ホロビオント)を理解するため、サンゴ片、藻類、堆積物、海水、エアロゾル、海綿などを広範囲に採取します。これにより、特に共生関係に注目しながら、ホロビオントの構造と機能を解き明かす多様なデータセットを構築します。


熱ストレス耐性の特性評価

タラ号に搭載されたCBASS(サンゴ白化自動ストレス試験システム)を用い、異なる群体から採取したサンゴ片を個別の水槽に分け、4段階の水温条件(ストレスなし、低・中・高ストレス)に曝露します。これにより、熱ストレスに対する耐性を評価し、白化に強いサンゴのバイオマーカーを特定します。標準化された手法によって、サンゴの熱ストレス応答を診断します。


古気候・古ゲノミクスのための地球化学解析

大型の塊状サンゴからコア試料を採取し、成長パラメータの定量、過去の気候復元、そして長期的なゲノム応答の解析を行います。


©Pete West – BioQuest Studios
課題

地域と連携して設計された、分野横断型の探査

「タラ号サンゴプロジェクト」の大きな特長のひとつは、きわめて包括的かつ分野横断的な科学アプローチにあります。ダイバー、海洋学者、海洋生物学者、環境DNA(eDNA)研究者、ゲノミクス研究者、バイオインフォマティシャン、微生物学者、フォトグラメトリー専門家、マイクロプラスチック研究者、古気候学者、生化学者、モデラーなど、多様な専門分野の研究者が一堂に会しています。

タラ号サンゴプロジェクトは、地域との緊密な協働によって実現したプロジェクトです。67名の科学者(女性22名、男性45名)が、40を超える研究機関から参加しており、そのうち11機関はコーラルトライアングル地域に拠点を置いています。

 

 

国際レベルでの保全政策を強化するために

サンゴ礁の保全は、本探査における最重要課題のひとつです。各国政府や地域の関係者と連携しながら、地球温暖化に対して最も耐性の高いサンゴ礁を特定し、保護につなげることを目指します。
タラ・オセアン財団は、寄港地において科学と政策をつなぐワークショップ(science-to-policy)を複数開催するとともに、サンゴ礁保全に取り組む国際サミットへ積極的に参画していきます。

©François Aurat

期待される成果

本探査の終了時には、コーラルトライアングル地域におけるサンゴの耐熱性(耐熱許容性)やサンゴ礁のレジリエンス(回復力)について、理解が大きく前進することが期待されています。これにより、標準化された調査・評価プロトコルの開発、オープンアクセスの研究資源の整備、そして地域の関係者(地域の担い手、研究者、管理者、政策立案者、教育関係者)への知見と技術の共有が可能になります。あわせて、重要なステークホルダーの意識向上と行動の促進にもつながることが期待されます。

長期的には、自然に高い耐性をもつサンゴ個体群を特定し、その強さを支える仕組み、特性、環境条件を明らかにすることで、生物多様性の重要地域におけるサンゴ礁の保護および再生能力の強化を目指します。

チーム

タラ号に集う研究者たち

参加科学者:67名(女性22名、男性45名)
40以上の研究機関が参画(うち11機関はコーラルトライアングル地域)
科学統括:3名の科学ディレクター

Paola Furla

University of Côte d’Azur

Serge Planes

School for Advanced Studies CNRS

Christian R Voolstra

University of Konstanz