目的

データが少ない日本沿岸海域のマイクロプラスチックのデータを構築

日本沿岸海域の表層水と堆積物におけるマイクロプラスチック汚染を評価し、科学者や社会が必要とするデータベースを構築する。


プラスティスフィア(マイクロプラスチック粒子に付着する微生物叢)の研究。海洋生態系への影響を評価する。


芸術や環境教育プログラム、イベントを通じて、プラスチック汚染のみならず、地球温暖化など人間活動が海洋に与える影響について、特に若い世代の意識を高める。

©Hiroyuki Nakagawasai / Tara Ocean Japan

日本はマイクロプラスチックのホットスポットと予測されています。

このまま対策が遅れると、2050年には、海には、魚よりもプラスチックの量の方が増えてしまうという試算があります。

しかしながら、日本の特に沿岸海域での研究調査はまだまだ足りていません。

概要

国際ガイドラインやタラ号の調査方法に基づく

調査地点の、表層水(海面)、堆積物(海底の砂や泥等)、及び、ビーチの砂の採集、及び、環境データ(電気伝導度/温度/深さなど)を調べる

 

調査方法
  • 3年

  • 15

  • 約300

プラスチック汚染の課題を解決するためには、科学的調査研究が重要であるが、汚染が問題であることを人々がもっと知ることも重要である。 ロマン・トゥルブレ (タラ オセアン財団 エグゼクティブディレクター)

マイクロプラスチックとは? 5㎜以下のプラスチックの破片のことを言いますが、その中でも種類は大きく2種類に分けられます。 一つ目は、自然界に出る前から5㎜以下の「第1次マイクロプラスチック」と呼ばれるものです。 二つ目は、元々大きなプラスチックが自然界に流出した後、紫外線や波、岩などの作用により分解され5㎜以下に小さくなったプラスチックで、これらは「第2次プラスチック」と呼ばれています。

わかったこと

日本沿岸はマイクロプラスチック汚染のホットスポットである

2019年に調査プロトコルの検討を開始し、北海道から沖縄まで日本各地15地点で調査を実施しました。

その結果、マイクロプラスチックの平均濃度は、

・表層水中:288.7 ± 651.6 g/km²(1 km²あたり約289 g)

・堆積物中:1,185 ± 3,829 kg/km²(1 km²あたり約1,185 kg)

となりました。地域によって濃度は大きく異なり、非常に高い場所もあれば比較的低い場所もあります。しかし全体として、日本沿岸がプラスチック汚染のホットスポットであること、そして海底への蓄積が進行していることが明らかになりました。

 

主な分析結果

 

降雨は、陸域から海洋へのマイクロプラスチック流入を増加させる主要因となっている

地方の沿岸地域では、十分な廃棄物管理が行われていないことが、流出の一因となっている

水産養殖や漁業による放置漁具は、沿岸域におけるマイクロプラスチックの主要な供給源

・検出されたマイクロプラスチックの種類は、**PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)**など、一般的に広く使用されるプラスチック

・沿岸域では、重く大きな粒子ほど速く沈降する傾向がみられる

・堆積物はマイクロプラスチックの蓄積場所(シンク)として機能し、特に河口付近で沈降が起こりやすい。

 

ふるい分け、密度分離、化学的処理を用いて、サンプリングした堆積物および表層水から合計53,674個の微粒子が抽出されました。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による分析により、表層水では85%、堆積物では70%の粒子がプラスチックであると確認されました。

本研究は、沿岸部におけるマイクロプラスチックの急速な沈降と、とくに地方部における廃棄物管理改善の緊急性を浮き彫りにしています。

© Tara Ocean Japan

学術出版物

11/08/2025

An Integrated Assessment of Microplastic Pollution in Coastal Surface Water and Sediment of Japan

Jonathan J. Ramtahal, Kugako Sugimoto, Samantha Phan, Tara Jambio Microplastic Consortium. Yumiko Patouillet, Romain Troublé, Christine K. Luscombe, Sylvain Agostini

Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査

チーム

JAMBIOのネットワークを利用して

JAMBIO (マリンバイオ共同推進機構)と協働することで全国で調査が可能となりました。

パートナー

アゴスティーニ シルバン

筑波大学 下田臨海実験センター 助教 タラ オセアン ジャパン理事

JAMBIO (マリンバイオ共同推進機構)

平成21年(2009年)に筑波大学下田臨海実験センターと東京大学海洋基礎生物学研究推進センターの連携協力組織として発足し、海洋生物学に関する共同利用・共同研究の推進、海洋生物学分野における学術研究の発展、全国の臨海実験施設の連携活動に貢献してきました

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