Manifeste pour le Vivant

地球上のすべての生物は、長い歴史の中で環境と関わり合いながら共に進化してきました。その生存は、環境の質・安定性・多様性、そして他の生物とのつながりに依存しています。人間も例外ではありません。

私たちは「いのち」の一部なのです。

 

しかし近年、地球はかつてないスピードで変化しています。淡水資源の劣化は深刻で、新たな実体*1の排出 が生態系の健全性と機能を脅かしています。自然環境の破壊や乱獲により、この50年間で野生動物の個体数は約75% *2 も減少しました。さらに、温室効果ガスの排出がこのまま続けば、今世紀末には地球の平均気温が2.9℃上昇すると予測されています。人間活動が及ぼした環境の急激な変化は、生態系や生物種の健康を脅かし、ひいては私たち人間の健康も脅かしています。

 

海洋微生物はマイクロプラスチック(緑と赤)と混ざり合い、プラスティスフィアと呼ばれる新たな生命圏を作り出す。© Samuel Bollendorf

 

私たちの地球はすでに不可逆的な変貌を遂げつつあります。しかし、その影響の大きさは、私たちの行動と意識次第で変えられます。気候変動、水資源の枯渇、生物多様性の喪失、汚染――これらは別々の問題のように見えますが、実はすべて”「いのち」と関係する危機”という、ひとつの根本的な問題に集約されるのです。

 

タラ オセアンは20年以上にわたり、国際的な研究機関と協力しながら、生物の複雑性とその未来を探求する科学探査を行ってきました。この研究は、生物多様性、気候変動、汚染の関連を理解するために非常に重要です。タラ オセアンの「いのち」と海を守るという使命は、これらのつながりを認識し、システム的な解決策を提供するという意志に基づいています。

 

La mise à l'eau des filets de prélèvement est une étape cruciale de la science à bord de Tara

サンプリングネットでの調査は、タラ号で行われる科学探査の重要な工程 © Maéva Bardy, Fondation Tara Océan

 

プラネタリー・バウンダリー※の9つの項目のうち、1つに偏って対処することで、他の項目に悪影響を及ぼすようなことがあってはなりません。すべての行動は最終的に、ひとつの目標に向かって進むべきです。それは、「いのち」を守ることです。そうでなければ、正しい問いに答えを出せず、私たちが直面している緊急の問題に対して未来を危うくすることになりかねません。

 

私たちは、政治的、経済的、社会的な対応が分断され、互いにうまく連携されていないことを実感してきました。気候変動対策に関する政策は、長い間、生物多様性の問題や新たな物質が環境に与える影響を後回しにしてきました。しかし、温室効果ガス排出の大きな原因のひとつであるプラスチック生産の問題に取り組まずに、どうして気候変動問題に対処できるというのでしょうか?また、海洋生物が二酸化炭素を吸収するという生物ポンプの重要な役割を果たしていることを、どう無視できるのでしょうか?

 

問題の原因そのものである現在の社会モデルを維持できるよう、多くの人々が技術的解決策を待ち望んでいる一方で、私たちは、新しい技術にすべての希望を託すことが非現実的であるということに気づかなければなりません。

実際、私たちが考えるべき解決策やイノベーションは、生産と消費のあり方、そして現在の地球の限界と相容れない社会の価値観においてこそ求められるべきです。生物多様性が持つ無限の複雑性は、発見や知的な豊かさ、驚きの源として長い間、尽きることなく探求されるべき領域です。知識に基づく科学、倫理的な考察、民主的な議論によって、技術的解決策の妥当性を公正に評価できるようにしなければなりません。

私たちは、生物多様性の保護と保全という課題に対し、長期的な視野に立った野心と同時に謙虚な姿勢で臨む必要があります。

 

 

「いのち」を守り、地球の健康を保つ。そして環境的・社会的正義を実現することが、今日の課題への対応の最優先事項でなければなりません。それは、「いのち」と調和する新しい社会のビジョンを共に築くことです。

 

 


 

 

Récifs coralliens sous une lumière luminescente

サンゴ礁の調和からインスピレーションを得て、社会の新しいビジョンを構築しよう © David Clodes

 


*1 新たな実体には、合成化学物質(マイクロプラスチック、内分泌かく乱物質、有機汚染物質)、放射性物質(核廃棄物、核兵器)、遺伝子組み換え生物(GMO)やその他の直接的な進化の改変など、進化の過程への人間の介入が含まれます。
*2 生きている地球レポート, WWF (2024)
*3 プラネタリーバウンダリーとは、地球の限界とも呼ばれ、人類が生存できる領域と限界点を定義する概念です。9つの項目には、気候変動、成層圏オゾン層の破壊、海洋酸性化、生物圏の健全さ、生物地球化学的循環、淡水利用、土地利用変化、新規化学物質、大気エアロゾルによる負荷があります。  https://www.stockholmresilience.org/research/planetary-boundaries.html