Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクト厚岸調査・啓発イベントレポート
「Tara JAMBIO ブルーカーボンプロジェクト」は、海藻や海草などのブルーカーボン生態系を科学的に調査し、その重要性を広く発信するプロジェクトです。2026年度は全国3か所で調査を実施しており、第3回目となる調査・啓発活動を北海道・厚岸で行いました。

3年目を迎えた本プロジェクトでは、これまで調査対象としてきた海藻に加え、今年から海草も調査対象に加えました。本プロジェクトが厚岸を訪れるのは、2024年に海藻を調査して以来2回目です。調査は7月26日から8月1日まで、北海道大学厚岸臨海実験所を拠点に行われました。
調査
今回の調査場所は、厚岸湖のアマモ場です。湖というと淡水湖を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、厚岸湖は海水と淡水が混ざり合う汽水湖で、牡蠣の養殖が盛んに行われています。
前回調査を行った浅虫のアマモ場も丈夫なアマモが広く群生しており、研究者たちはその規模に驚いていました。しかし、厚岸湖のアマモ場はそれを上回る密度で生育しており、「これまでで一番密集している」と驚きの声が上がりました。船の上から見ても、まるで芝生のように一面を覆っている様子が確認できました。

調査期間中は天候には恵まれましたが、水中では透明度がおよそ15cmしかなく、自分のダイビングコンピューター(時計)を確認するのも難しいほどでした。さらにアマモが非常に密集していたため、ダイビング調査では安全を確保しながら調査を進められるよう、調査方法を工夫する必要がありました。

ダイビング調査は2人1組のバディ制で基本行いますが、近くにいるバディの姿も見えないほど視界が悪く、コミュニケーションを取るのにも苦労していました。これまでにも透明度の低い海域で調査を行ってきましたが、今回の視界の悪さは過去でも最も厳しい環境の一つだったそうです。


一方、採水や採泥は水深約5mと比較的浅い場所で行われたため、大きな問題もなく順調に終えることができました。
アーティストとして参加したのは、東京藝術大学を卒業し、昨年の忍路調査にも同行した川畑那奈さんです。船上では採水や潜水調査を見学し、ラボではサンプル処理を手伝うなど、研究活動を間近で体験しました。
川畑さんは「昨年初めて海について深く考える機会を得た。今年は2年目なので、より解像度高く作品制作に向き合いたい」という思いで参加してくださいました。
昨年は数多くの種類の海藻に触れましたが、今年目にしたのはほぼアマモでした。しかし、その違いがかえって印象深く、アマモだけをじっくり観察できたことが新たな発見につながったと話していました。
また、透明度の低さや密集したアマモに苦戦しながらも、自然条件に合わせて工夫を重ねる研究者たちの姿がとても印象的だったそうです。「調査が思いどおりに進かなくても、その状況を楽しみながら取り組んでいる姿がおもしろかった」と話していました。
今回は、調査中に研究者が何気なく口にした一言から作品の着想を得たとのこと。拾った貝殻も持ち帰り、今後の作品制作に生かす予定です。今回の体験がどのような作品へとつながっていくのか、とても楽しみです。

啓発イベント
最終日には、前回行った2024年のイベント同様、厚岸町海事記念館にもご協力をいただき、一般向けの啓発イベントを行いました。
はじめに、センターから車で約10分の場所にあるバラサン岬でビーチクリーンを行いました。20分ほどの活動でしたが、多くのごみを回収することができました。特に目立ったのは、ペットボトルと漁具です。
前プロジェクト「Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査」では、水産養殖や漁業で使用される漁具が沿岸域のマイクロプラスチックの主要な供給源の一つであることが示されており、厚岸でも同様の傾向が見られました。また、ペットボトルなど私たちが日常的に使う生活用品も海岸に多く漂着していました。こうしたごみが海洋プラスチックやマイクロプラスチックの発生につながることを伝え、使い捨てプラスチックの使用を減らすことの大切さについて参加者の皆さんと考えました。

その後、臨海実験所に移動しセミナーと実験・観察をしました。臨海実験所の役割については北海道大学の仲岡先生からお話いただき、タラ オセアンの活動の発表の中では、前プロジェクトのマイクロプラスチック共同調査で以前厚岸を訪れたこと、またその調査結果も紹介しました。
ブルーカーボン生態系のお話と実験・観察パートは、三重大学の渡邉先生が担当しました。

生き物観察では、小さな生き物を夢中で探したり、アマモを丸めてアート作品を作ったりと、それぞれが思い思いに楽しむ姿が印象的でした。


啓発イベントにご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
また、調査を受け入れてくださった北海道大学の皆さま、そして啓発イベントにご協力いただいた厚岸町海事記念館の皆さまにも、心より感謝申し上げます。
