タラ号 新たな探検
2017年2月出版の『タラ号 新たな探検』では、創設者、タラ号の船長、乗組隊員、科学者、長年の友人や熱烈な支援者たちの証言などを通じて、タラ号の原点や主要な探査プロジェクトの足跡を解き明かしていきます。タラ号の軌跡とストーリーを読者に共有する、ぜひお勧めしたい一冊です。
氷の海から、はるか大海原まで。
最先端の科学研究と探査の世界とを重ねながら、スクーナー船タラ号は海を横断しています。19世紀の探検家たちの北極遠征の流れを今に受け継ぎながら、乗組隊員と科学者たちは、世界で起きている環境の激変に対する鋭い観察眼をもって、仕事に取り組みます。
現在、海洋探査は、海の遺伝子研究のステージにあります。本書の中でタラ号のクルーたちから語られるのは、船上での挑戦、不安と困難、共有と冒険の喜び。その臨場感あふれる言葉は、日々彼らが知と科学のフロンティアを拓くべく挑み続ける航海へと、読者の心を引き込みます。
タラ号と歴代のクルーが、探査プロジェクトの数々の苦難を乗り越え、今や世界の科学研究の檜舞台を踏むにいたるまでの様子が、本書では書かれています。
「1996年に北極に行き、私は自然のありのままの姿を発見できた。この船が、これから海や地球について人々の目を開き、インスパイアするものであってほしいと思った」
ジャン=ルイ・エチエンヌ設計。前所有者はピーター・ブレイク卿。エチエンヌ・ブルゴワとアニエス・トゥルブレがこの船に出会った日以来、数々の出会いと出来事がその歴史を刻んでいます。
「タラ号の原点とは何か?」との質問に、エチエンヌ・ブルゴワは本書の中で、こう答えています。
「何よりも仲間たち、そして環境保護に関心を持って取り組んでいる人たちだ」
また、エグゼクティブディレクターのロマン・トゥルブレはこう語っています。
「タラ号の冒険を原点から語るには、何よりも関わってきた多くの人たちの声が必要だ。時に陰に隠れながら重要な役割を担ってきた人たちに語ってもらい、タラ号が次第に、世界でも唯一の海洋探査船へと成長していく様子を伝えたいと思った。人間的な側面の話、科学の話、タラ号の信念の強さを築いたもの、タラ号をつくってきた人々、これからのタラ号をつくる人々、そういった話を伝えたい」
本書では、2004年の初探査から2016年に出発したタラ号太平洋プロジェクトまでの冒険、不安や努力、そして大きな科学的発見や、共有と冒険を愛する心が描かれています。若い世代のための海の大使として、あるいは、現代版海の女神カリプソとして、アーティスト、政治的意思決定者、支援者、未来の船乗りを目指す若者など、段々と多くの人々にとってのシンボル的存在やインスピレーション役になっているタラ号。全力でお勧めする一冊です。ぜひお手にとってご覧ください。
本書は、豊富な写真と地図でスクーナー船タラ号の航路をたどることができます。また、タラ号乗船アーティストの作品紹介、広大な北極、海の宝石・プランクトン、環境汚染にさらされる海の現状についても紹介しています。
セバスチャオ・サルガド、フランシス・ラトレイユ、エリー・ガ、ピエール・ユイゲ、バンジャマン・フラオ、シルヴァン・クジネ・ジャック、マーラ・G・ハセルティン、エルザ・ギヨーム
タラ オセアン財団発行 – 176ページ – 限定版
英語版、フランス語版、日本語版
著者
仏日刊紙「リベラシオン」ジャーナリスト。タラ オセアン財団が率いる探査プロジェクトの数々に特派員として同行。タラ号を10年以上取材。
ディノ・ディ・メオ Dino Di Méo