国連「公海における生物多様性の保全に関する条約」でついに合意!|15年にわたる協議の成果

米ニューヨークの国連本部で3月4日(土)の夜、世界の海を保護するための条約案に各国が合意しました。2週間にわたる作業と36時間以上にわたる最終協議を経て、公海上の生物多様性に関する国際条約の採択に向けた数々の問題を乗り越え、合意が実現に至りました。

2023年3月4日、ニューヨークでBBNJ (国家管轄圏海域外の海洋生物多様性) 条約に合意

一部の条項への不満足と最終案についての留保を3カ国が表明しているものの、今回の協議の決着は歴史的瞬間となりました。国の管轄下にある沿岸地域を超えた公海の生物多様性保護のための法的手段が可能になります。この文書は今後、国連の7つの公用語における法律用語の整合性を検討する作業部会に通されます。

公海とは何か?

2012年に正式に協議が始まって以来、多くの点で難しい議論が続き、特に、海洋の70%以上、つまり地球全体の表面積の半分を占める公海の規定に関する議論は難航を極めました。各国の意見は、公海の自由の原則を維持したい国と、海洋資源を商業化するなどして得た利益配分を含めて、公海を人類共通の遺産とみなしたい国とに大きく分かれました。

この問題の他にも、政治的に非常に難しい次のような協議事項がありました。

これらの問題点については、協議最終日の朝になっても、まだすべてが行き詰まっているように思えました。一部のオブザーバーは、金曜日の日中のうちに、協議は失敗したと報告したほどです。しかし、最終的には、レナ・リー(Rena Lee)議長の粘り強さと、協議担当者やオブザーバーの優れた手腕と詰めの協議によって、先進国、途上国間双方の妥協点が生まれ、決定までに時間が欲しいと要望するロシア、トルコ、ニカラグアを除いて、すべての国が同意する最終案へ至ることができました。

重要な点は、この文書が単なる善意の付け加えではなく、歴史的な法的拘束力を与える文書であり、事務局、科学評議会、締約国会議などを執行機関とする、公海のための新しい国際的権限を確立するものであるということです。今後は、できるだけ早く批准できるよう努力し、第1回締約国会議では、まだ明確でない専門的ないくつかの点について結論を出す必要があります。

パリ協定の時と同様に、私たちは迅速な批准と第1回締約国会議が2025年に開催されること、また各国が具体的に海洋保護区の設定に必要な期限と協議、研究資金調達の方法、科学評議会のさまざまな役割などを定めていくことを望みます。 

2012年に開催されたリオ+20の準備会合から取り組んできたタラ オセアン財団は、この成功を特に喜んでいます。私たちは長い道のりを歩んできましたが、ついにこの条約を実現することができました。

アンドレ・アブル(André Abreu)/政策提言・国際協力担当ディレクター

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